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セルフ・アサーションについての本を読んだ

先日、本屋をぶらついていたらアサーション・トレーニングという本を発見した。アサーションとはなんだろう、コミュニケーションと何が違うんだろう?と疑問に思ったのでこの本と関連書籍を読み、読書メモなどをまとめることにした。今回読んだのは以下の3冊。同じ著者の本が2冊あるので、知識としては若干の偏りがある可能性がある。

結論

アサーション、もしくはアサーティブネスとは「自分も他人も尊重した自己表現」であり、「お互いの人種やジェンダー、文化をこえて平等な人間関係を気づくためのツール」である。アサーションとコミュニケーションは似ているがイコールではなく、アサーションはコミュニケーションの一形態といえる。自分も相手も大切にするコミュニケーションだ。

アサーションとは

まず、アサーション・トレーニングを読んだ。本書では、アサーションとはどういうことかを考えるため、人間関係の持ち方における分類として以下の3タイプを紹介している。

  1.  ノン・アサーティブ(非主張的、他者優先)
  2. アグレッシブ(攻撃的、自分優先)
  3. アサーティブ(自分優先だが他者にも配慮)

ノン・アサーティブとは気持ちや考えを表現しない・しそこなうことで自分自身で自分の言論の自由を踏みにじるような言動を指している。劣等感、あきらめ、未練から欲求不満や怒りに繋がることがあるという。アグレッシブとは気持ちや考えをはっきりと言うが、相手の言い分や気持ちを無視・軽視し、押しつけてしまう言動を指す。Team GeekではHRT(謙虚:Humility、尊敬:Respect、信頼:Trust)という考え方が紹介されているが、このHRTにおけるRespectに欠けた状態と言えるのではないか。最後にアサーティブだが、自分の気持ち・権利はきちんと主張するが、相手の気持ち・権利も尊重する姿勢を指す。HRTにおけるRespectがある状態、と言ってよいだろう。

では、なぜアサーティブになれないのか。本書では、例えば「自分の気持ちが把握できない」や「結果や周囲を気にしすぎる」、「考え方がアサーティブではない」、「アサーションスキルを習得できていない」という要因を取り上げていた。ものの見方による影響も結構あるようだ。自分も当てはまるなあ、というものがいくつかあった。事実に対して、自分は常に色眼鏡で見ているということを意識することも大切だろう。

アサーションの分類

トピックとしておもしろかったのは、アサーションの分類だ。本書ではアサーションを「日常会話におけるアサーション」と「議論や課題達成、問題解決の場におけるアサーション」の2つに分類している。日常会話におけるアサーションとは、メンテナンス(関係維持)のアサーションであり、人間関係を作り、維持することを目的とする。日常会話やイベント、飲み会でのやりとりが該当する。本書では「会話の始め方」「会話の続け方」「会話の終わらせ方」などに言及している。これに対し、議論や課題達成、問題解決の場におけるアサーションとはタスクのアサーションであり、仕事で用いるコミュニケーションはこちらが該当する。時々、「コミュニケーション能力というのは何を指すのだろうか」という話を聞くが、仕事においてはこのタスクのアサーションを行うことができる能力、と考えるとしっくりくるように思えた。

自分自身を知る

次に自己カウンセリングとアサーションのすすめを読んだ。これは、アサーション・トレーニングの著者が書いた別の本で、タイトルに「自己カウンセリング」とあるように自分の気持ちを知ることについて中心的に書かれている本だ。学生の時、自己分析のようなこともしたが、そのときに知っていればより自分について知ることができたかもしれない。

本書では、冒頭で自分が自分の特徴について書き出していき(20個書き出すのだ!)、その結果から以下のようなことを明らかにしていく。

  • 自分のことを事実と感じ方のどちらから見ているのか。外面と内面のどちらを重視しているのか。
  • どの程度自己開示しているか。
  • 自分のどんな点に気づき、どう受け止めているのか。厳しく見ているか、楽観的か。それとも同じ程度か。
  • 現実の姿を見ているのか、それとも理想の姿を見ているのか。
  • 大切にしていること、自分らしさの指標は何か。

自分もやってみたが、結構特徴がでるものだ。そもそも20個書くのが大変で、自分の特徴について知り、気持ちや考えを受け止めることがアサーションの最初の1歩だということを認識できた。また、自分の考え方というのは体験から生まれた原則・思い込みであり、現実とずれる場合もある。そういう時は現実にあった考え方に変えることを薦めている。考え方を変えるのはかなり大変そうだが、自分の中にある原則が何かを知れば助けになりそうだ。

さらに、自分を理解するための方法として、表現のタイプとして感情型・思考型・行動型の3つを紹介している。感情型とは感情や気持ちが優位に立つタイプのことで、ものごとのとらえ方も感情ベース。率直で素直だが、感情によって周囲を巻き込むこともある。周囲に伝えられない場合、それによってストレスになることもある。思考型とは考えることを大切にするタイプで、ものごとの筋道や論理を大切にする。面白みに欠けるように見えたり、臨機応変さに欠ける場合がある。行動型は、まずやってみる、手が早いタイプ。ふりかえったり反省をせず、やりっぱなしになる場合があり、刹那的な面がある。どのタイプも自分の中にはいるだろうなあと感じた。本書でも、この3タイプにおいて、自分がどれに近いのか考え、3種類をバランスよく育てていくのがよいと言っている。

自分の気持ちに気づくということは、自分とつきあうことだ。そして、それは自分を育てるということでもある。自分のことは自分で面倒を見て、大切にする。そして、見えてきた大切にすべき場所に水をやり、育てる。最近会社でストレングス・ファインダーが話題になっている。これも自分について知ることで強みを伸ばすためのもので、自分とつきあうためのやり方の1つだろう。

コミュニケーションとは

読んでいてよいなと思ったのが、「コミュニケーションとは誤解やズレを修正していくこと」という話だ。なんとなく、1回で正確に伝えないといけないと思っていたが、必ずしもそうではないなあということに気づいた。もちろん仕事だと1回で伝わる方がよいが、お互いに誤解・ズレを許容し、やりとりすることで相互理解できればよい、くらいの感覚でいる方が穏やかに過ごせるのではないか。少し前に新入社員向けにSlackについて話をした。そこでテキストベースのコミュニケーションは難しいので相手を思いやりましょう、というニュアンスのことを言ったのだけど、これってアサーションのことだったんだなあ。次、同じテーマで話をすることがあればより掘り下げることができるだろう。楽しみだ。

Your Perfect Right

最後に、アサーション・トレーニングで紹介されていた自己主張トレーニングを読んだ。この本は1970年代に出版され、改訂されたものとのこと。アサーション・トレーニングと重複する内容も結構あるが、権利や人種、ジェンダーのような多様性についての話、SNSを用いたコミュニケーションの話などがある(SNSについては改訂版で追加されたとのこと)。

今回はさっと読んだのだけど、その中でも「個人の成長のための行動モデル」と「21世紀のアサーティブ・メッセージ」が印象に残った。「個人の成長のための行動モデル」は、「新しい経験に対して徐々に開放的になる」「徐々に、今ここに生きる」「有機体として、徐々に自分を信頼する」という3タイプの質問で構成された行動モデルで、自分を見つめ直すきっかけになりそうな質問が並んでいる。「21世紀のアサーティブ・メッセージ」は、メールやSNSでやりとりするときにアサーティブであるにはどうするとよいのか?という話で、基本は同じだが、相手にどう伝わるかをよく考えること、顔文字・絵文字で感情を表現するといったことが紹介されている。Slackでも、絵文字を使うのと使わないのではずいぶん印象が変わる、ということを実感しているので、非常に参考になりそうだ。

まとめ

アサーション、アサーティブネスという考え方について基本的なことを知ることができた。次は「個人の成長のための行動モデル」について深掘りしたい。また、今の自分に欠けている要素について自覚することもできた。今の自分はアサーティブか?と自問自答することで、よりよいコミュニケーションを行えるようになれればと思う。


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