「テクノロジーは貧困を救わない」を読んだ
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外山健太郎
みすず書房
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1月に「テクニウム――テクノロジーはどこへ向かうのか?」や「〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則」と一緒に買った1冊。ようやく読み終えた。テクノロジーは銀の弾丸ではなく、それに携わる人の心や知性、意思と合わさることで進歩を生み出すのだという内容だった。定期的に話題になる、メールやSlackは本当に生産性に繋がっているのか?というテーマへの1つの回答はこれかなあ。結局は使い方、心構えとなり、技術の敗北なのではとどうしても感じてしまうけど。「DEEP WORK」で言っている、ツールの選び方も似た考え方か。自分にプラスの影響があるもの、つまり自分の人的能力を増幅させるものを選ぼうという話なので。
以下メモ。
Googleが「外部からの支援(世界の隅々にテクノロジーを届けたい)」を目的としているのに対して、CFKは「内面的な強さ(個々人の才能を伸ばす)」を目的としている
本当に新しいテクノロジーによって進歩するのだろうか?
増幅の法則:テクノロジーはそれ単体では何も変えられない。しかし、「既存の力」を増幅させることができる。
テクノロジーから得られるものは、利用者がしたいことの延長である。
本当の理由を忘れてはならない。適切なテクノロジーがあれば任意の行動や習慣を引き起こすことができるのか?No。
テクノロジーによって生み出される感情:
- 取り残される恐怖:FOMO(Fear Of Missing Out)
- 不要な刺激への中毒ATUS(Addiction To Useless Stimulation)
- メッセージを受け取る快感:PORM(Oleasure Of Receiving Message)
- 仕事最優先:SWAP(Seeing Work As Priority)
- 重要人物らしく見られたい衝動:UTSI(Urge To Seem Important)
テクノロジーは既存の格差を広げる
社会問題に対処することを目的とした全てのテクノロジー、アイデア、政策などを「介入パッケージ」と呼ぶ。この介入パッケージの成功には、指導者・実施者・受益者の三位一体が重要。
「できる」イコール「する」ではない。電源を入れ、操作するのは人の手である。なぜ、場当たり的な処置に夢中になってしまうのか?
より大きな幸福につながるのでなければ、富にも社会的変化にも意味はない。繁栄は幸福のための物質的必要条件を満たし、正義は幸福の倫理的条件を追求し、自由は「価値を見いだすべき理由のある人生」を生きさせる。
幸福を損なうのは「短期的な快楽」で、これは長期的な不満につながる。ヘドニア、感情的な幸福は短期的にはよいかもしれないが、長期的に考えるとエウダイモア(自己実現・生きがいによる幸福)がよいのかもしれない。
テクノロジーの十戒。テクノロジーがとてもよい形で人類の文明を変化させてきたため、一般的になりつつある考え方。
- 意義より測定
- 質より量
- 根本原因より究極目標
- 経路依存より目標主義
- 歴史/概念は無視し、目標のみを目指せ
- 内的より外的
- 他人が変わることを期待せず、外的環境のみに注力せよ
- 実証済みよりイノベーション
- 英知より知性
- 価値没頭より価値中立
- 集団主義より個人主義
- 責任より自由
テクノロジー利用における3習慣
- 目標にあった人的能力の特定・構築
- 介入パッケージは適切な人的能力の増幅に活用
- 介入パッケージの無節操な復旧は避ける
介入パッケージが増幅するのは「心・知性・意思」である。どのプラスの能力を増幅させ、どのマイナスの能力を増幅させないか。介入パッケージだけではなく、訓練も不可欠。
「心・知性・意思」から内面的成長が生まれ、いずれ転換点へ到達する。
内面的成長によって意図の輪を広げる。
価値観のマトリクス。伝統的価値観と世俗的合理的価値観。生存価値観と自己表現価値観。
コミュニティが実際に必要としているものに努力を向けよう。
アリストテレス「人は正しい行為をおこなうことで正しい人間となり、節度ある行為をおこなうことで節度ある人間となり、勇敢な行為をおこなうことで勇敢な人間となる」